第30章 ●復讐
「な、何をしているっ!!ナナシは私の物だっ!触れるなリヴァイ!!」
声を荒げるエルヴィンとは対象的に、二人は何も聞こえないように
その行為をやめようとはしなかった。
「ナナシ、君は私の妻だっ!これは浮気で、
私を裏切っているんだぞっ!?それをわかっているのかっ!?」
怒りと哀しみで頭の中がゴチャゴチャしながらそう叫ぶと、
冷たい瞳でこちらを見たナナシが「わかっている」と淡々と
告げる。
その声には何の感情も込められていないように感じた。
「先に私の心を踏み躙ったのはお主だ。泣いて叫んでも
止めてくれなかった。言っただろう?復讐すると・・・。
お主が私にしたように最も効果的な方法でお主に苦痛を
与えてやる」
その言葉の意味を理解したエルヴィンは顔面蒼白になりながら、
これから目の前で繰り広げられる光景を想像し
「やめてくれ!」と懇願する。
エルヴィンにとって一番の苦痛は自分が物理的な責め苦を
受ける事ではない。
目の前の愛しい存在が他人に奪われる事が何よりも恐ろしかった。
「やめろっ!リヴァイ、おまえもそれで良いのかっ!?
それ以上ナナシに手を出してみろ!私は絶対におまえを許さないっ!」
リヴァイがエルヴィンに何か言いかけたが、
それを遮るようにナナシが言葉を被せる。