第5章 謎の新兵
一人状況がわからないエレンは目を丸くして
二人の様子を見ている。
「ペトラかエルドに私がいる事を聞かなかったのか?
この服はペトラに借りたのだが・・・」
「あいつら『厨房に行くと良いことがある』って言った以外、
何も言ってなかったッス。クソッ!嵌められた!
まさかナナシさんがいるなんて・・・」
あー・・・、オルオの奴は担がれたのか。
オルオがリヴァイのように舌打ちしていると、
黙って見守っていたエレンが「あの~」と声を上げる。
「オルオさんとナナシって知り合いなんですか?
やけに親しげというか・・・」
「馬鹿っ!おまえ、ナナシさんを呼び捨てにすんじゃねぇっ!」
「はぁ・・・?」
オルオは首を傾げるエレンに声を荒らげ、
偉そうな態度で説明を始めた。
「良いかっ!?ナナシさんは以前、調査兵団で
教官をなさっていたお方なんだ。あのリヴァイ兵長ですら
師事したすっごい御仁なんだよ。おまえみたいな新兵が
呼び捨てやタメ口なんて百年早い!」
エレンはオルオの言葉を咀嚼するように飲み込んでから
脳内でその意味を把握すると、漸くナナシがどういう存在か気づき
叫ぶように声を上げた。
「・・・・え?えええええええっ!?嘘でしょっ!?
嘘ですよねっ!?だって、どう見たって俺と同い年かちょっと
下くらいにしか見えないのに、兵長が師事するなんて
そんな・・・っ!」
「嘘じゃねぇっ!何を隠そう俺達リヴァイ班も直接教えを
受けてたんだ!いや、俺達だけじゃなく、ミケ分隊長や
エルヴィン団長も鍛えてもらってたんだぞ!しかも、
ナナシさんはエルヴィン団長のこ・・・ガフッ!」
「オルオ、五月蠅い」
オルオを拳骨で黙らせたナナシは、
「はぁぁ~」と溜息を吐く。
エレンは驚きの余り固まってしまったようで、
目を見開いたまま動かなかった。
そりゃあ信じられない話だろう、とエレンの反応を見て思うが、
オルオの言った事は本当の事なのでナナシは否定出来ない。