第5章 謎の新兵
エレンはこの古城でたった一人の新兵で、
年上ばかりの環境では色々気を使うことも多く、
気を張っていたに違いない。
そこに同い年くらいに見えるナナシに会って、
緊張が少し解れたのだろう。
だから、親しみを込めてこんなに饒舌に色々と話し掛けてくれるのだ。
純真無垢なエレンを騙したようで、今更ながら罪悪感が生まれる。
「あのな・・・エレン」
「うん?何だよ?」
「私は訓練兵団を出ていないのだ」
「えっ!?」
瞳が零れそうなくらいエレンの目が見開かれ、
「どういう事だ?」と首を傾げられた。
「実は私は・・・・」
「ナナシさん・・・っ!?」
エレンに事情を説明しようとした所で、間の悪いことに
オルオが厨房に現れ話が中断された。
オルオは感極まった顔で涙ぐみながらナナシの傍までやってきて、
縋りつくように「無事だったんスねっ!」と男泣きする。
「良かったっ!突然兵団からいなくなったから心配だったんですっ!
兵長に聞いても『また会える』くらいしか教えて貰えなく
・・・ガフッ!」
何故そこで舌を噛む、オルオ・・・・。
相変わらずなオルオにナナシは苦笑しながら、
「心配かけてすまなかったな」と彼の肩を叩いた。