第29章 エルドの想い
「どんな罰でも受けるというのは本当か?」
「あぁ、私はそれだけの事をしたと思っている。
報いを受けるのは当然だ」
「本当に本当か?」
「無論だ」
「ならば、念書を書け」
突然のナナシの提案にエルヴィンは一瞬目を丸くしたが、
すぐに懐から携帯用の紙とペンを出し「何と書けば良い?」と
それに応じる。
ナナシが念書の文言を口にすると彼は困惑した表情をしたが、
余程罪悪感があるのか何も言わずそれを文書に認め、
きちんと正式なサインをしてそれを渡してきた。
念書の内容を確かめるとナナシはそれを懐に仕舞い
立ち去ろうとしたが、またエルヴィンに手を捕まれ足止めされる。
「待ってくれ。これで許してもらえるのか?」
「・・・お主が私から与えられる罰をきちんと受けたなら、な」
「今その罰を与えないのか?」
その言葉にナナシはエルヴィンの顔をまじまじと見つめ
「今日はやらない」と簡潔に答える。
よく見れば、彼の左頬は赤く腫れており唇も切れているようだった。
恐らくミケが殴ったのだろう。