第29章 エルドの想い
見下ろしてくる蒼い双眼が此方を責めるように見つめてくるが、
責めたいのは此方の方だと心の中で悪態を吐いて移動しようと
したものの「待って欲しい」と腕を捕まれ、それが出来なくなった。
元の丸太に座らせられ、相手は膝をついてナナシを
見上げるように見つめる。
「・・・身体の調子は?」
「・・・・・・・」
どの面下げて加害者がそんな事を聞くのだとムカついたので
黙っていると、彼は掴んでいた腕の袖を捲り包帯が
巻かれている事を認識したようだ。
「すまない・・・。どうしても君と離婚したくなかった。
酷い事をした自覚もある」
目を伏せ謝罪してきた彼は本当に反省しているのだろうが、
今回はそう簡単に許すつもりはない。
自分の考えを無理矢理押し通すなど、モラハラ以外の
何ものでもないではないか。
「エルヴィン・・・私は絶対お主を許さない」
そう言葉を掛けるとエルヴィンはハッとしたように顔を上げたが、
何が嬉しいのかすぐ破顔し「あぁ」と頷いた。
「私は怒っている。本気だ。それなのに、何故笑う?」
ムカムカしてそう尋ねると、彼は
「君が私と話してくれたから」と答え
「許さなくて良い。どんな罰も受けよう。だから、頼むから
ずっと一緒にいてほしい」
と懇願までする始末。
ナナシは目を細め「ほう?」と、エルヴィンが言った言葉を
反芻した。