第29章 エルドの想い
「先に言っておくが、もしかしたら縁起でもないと
思われるかもしれん。だが、私にはこんな『まじない』しか
出来ないので、それは許してほしいと・・・」
「御託は良いから、さっさと本題を話せ。今更おまえを
責めるような事は言わねぇよ」
「・・・来世では幸運な人生を歩める『まじない』だ」
リヴァイにぶった切られたので単刀直入に言うと、
二人は目を丸くして少し止まった。
「おい、それはつまり・・・」
「死んだ後幸せになれるという事でしょうか?」
リヴァイとエルドが困惑げにそう聞いてきたので肯定すると、
エルドは可笑しそうに破顔し、リヴァイは何とも言えない
表情をした。
「そんな確約があれば死ぬ恐怖も少し緩和されますね」
「良いんだか悪いんだかよくわからないまじないだな・・・」
「うるさい・・・それしか出来ないのだから、文句言うな」
多分二人は信じていないのだろうが、
これはナナシの妖としての力なのでエルドの言う通り
『来世での幸せの確約』になる。
その分やればやる程、ナナシの罪は重くなるが、
それはもうどうでも良くなってきていた。
恐らく、もうナナシの罪は手遅れ状態だと考えたからだ。
それならば、自分を大事にしてくれた人間が少しでも来世で
幸せになって欲しかった。
例え、そこに自分がいなくても・・・・。