第29章 エルドの想い
「エルド、少し寄って屈んでくれ」
クイクイと手招きをして不思議そうな顔をするエルドを屈ませると、
ナナシはその額にキスを落とした。
「な、ナナシさんっ!?」
驚いて動揺するエルドに、ナナシが「ただの『まじない』だ。
他意はない」と告げると、ホッとした顔をしてすぐに
いつもの彼に戻ったが
「ほう?まじないか?」
という低い声に飛び上がらんばかりに身体を跳ねさせた。
入り口を見るとリヴァイが不機嫌そうに立っていて、
今のをバッチリ目撃されていたようだ。
ナナシとしては本当にエルドの幸せを願っての事で他意など
無いので、平然と「そうだが?」と返すと、リヴァイの眉間に
皺が寄った。
「じゃあ、俺にもしてくれんのか?その『まじない』ってやつを・・・」
ツカツカと詰め寄るようにナナシの正面に立ったリヴァイは、
何故か怒っているようでナナシは不思議そうに首を傾げる。
「無論だ。リヴァイ班全員にはやろうと考えていた。お主にもだ」
リヴァイは背が低く、ナナシが背伸びすれば充分額に届いたので、
迷わずキスを落とすと彼は心底驚いた顔をしてナナシの顔を
凝視した。