第29章 エルドの想い
「ナナシさんは俺の事軟派な男と思っているでしょう?
俺はこう見えて彼女一筋なんですよ。昔からの幼馴染なんです
けどね。・・・まぁ確かに他の女性と遊んでいた時期も
ありましたが、結局、幼馴染の彼女が一番自分を飾らずに
済んで楽だったというか、何というか・・・」
「そうだったのか・・・それはすまない」
「いえ、俺も幼馴染が彼女になるまでは、それなりに
荒れていたんで・・・。あっ、誤解が無いように言って
おきますが、幼馴染が彼女になってからは他の女性に
現を抜かしたり、浮気とかしてませんからね?」
茶化すように笑ったエルドにナナシも少し頬を緩ませると、
彼は安堵したように穏やかな笑みを浮かべた。
きっと、茶化すように言ったのも自分を気遣っての事なのだろう。
「俺が調査兵団にいる事をあまり快く思っていないようで
時々喧嘩もしますが、いつも折れてくれて本当に頭が
上がりませんよ。つい、彼女に甘えてしまってまだプロポーズも
出来ていませんが・・・・ってすみません。俺ばかり話して・・・」
エルドが包帯を巻く手を止めて苦笑したが、
ナナシはそんなエルドに話の続きを促した。
何故かエルドの話が微笑ましくて聞いていたかったのだ。