第29章 エルドの想い
少しするとエルドが軟膏の瓶と包帯を持って戻ってきて、
腫れている部分に軟膏を塗ってくれた。
聞けばエルドが愛用している軟膏で、とても良く効くのだという・・・。
「調査兵団に入ってから色々な薬を試しましたが、これが一番
即効性があって良いんですよね。たまの休みに実家に帰った時、
家族や恋人に怪我の心配をされたくなくて、早く治る薬が
無いかと薬屋をはしごしたもんです」
「恋人がいたのか?」
エルドは美形だし女慣れしているから不思議ではないのだが、
ナナシにとっては彼にきちんとした恋人がいた事が少し
意外で、つい言葉にしてしまった。
てっきり色々な女性とお付き合いしているものかと・・・。
エルドもそんなナナシの考えている事がわかったのか、
可笑しそうに吹き出しながら「酷いなぁ」と話し始める。