第29章 エルドの想い
聡い彼はすぐに気づいたのだろう。
これはエルヴィンがやった事だと・・・。
そうでなければ、わざわざエルヴィンの名前なんて出すはずないし、
「団長に報告はしたのですか?」という質問をしてくるはずだ。
エルドはナナシの袖を少し捲り、腫れている傷を確認すると
「腫れに効く塗り薬を持っていますので、取りに行ってきます」と
言って部屋から出ていった。
無駄な事は聞かず、言わず、副官としてとても有能な男だと思う。
そして気遣いが出来て優しい人間だとも。
ナナシはそんなエルドに心の中で感謝した。