第29章 エルドの想い
「自分では・・・何も力になれるような事は無いかもしれませんが、
辛い目に遭っていませんか?」
「え・・・?」
ナナシはエルドが見ていた自分の手首に視線を落とし、
そこで漸く彼が何故自分にそう言ってきたのか理解して、
罰が悪くなる。
「すみません・・・出過ぎた真似とはわかっていますが、
流石に心配で・・・。決してナナシさんを困らせるつもりでは
なかったのですが・・・」
苦笑しながら言うエルドに、余計彼に気を遣わせてしまったと
ナナシは慌てて否定した。
「違う。エルドの気遣いは嬉しい。・・・だが、これは
他の者には言わないでいてほしい。これは個人的な事だから、
変な噂が立つと困るんだ」
「他言は致しません。確認なのですが、この状況を
知っているのは兵長とハンジ分隊長、ミケ分隊長
・・・・あと、エルヴィン団長で間違いないですね?」
最後に敢えて出された名前にグッと息を詰めながらも頷いて
肯定すると、エルドはなんとも言えない表情をして
ナナシの手を取った。