第29章 エルドの想い
翌日、ナナシは本当に自室に引き籠もって様々な事を考えていた。
昨夜リヴァイに言われた事を何度も反芻し、
自分なりの考えを固めていく。
幾分考えもまとまり冷静になりつつあった頃、
食事を持ったエルドがやってきた。
「もうお身体は大丈夫ですか?ナナシさん」
「・・・何とか」
「それは良かったです。あ、あと勝手にペトラにナナシさんの
体調の事話してスミマセンでした。こういう事はペトラに
伝えるのが一番かと思いまして・・・」
「・・・・・・・」
ナナシはその言葉に何も返せなかった。
というか、男である自分が今まさにその生理用品を有難く
使わせてもらっているので、ナナシのプライドはズダズダだったのだ。
それでも心配や気遣いは嬉しかったので、エルドにペトラにも
「ありがとう」と伝えて欲しいと頼むと、彼は笑顔でそれを
了承し、食事を置いて出て行こうとした。
だが、すぐナナシの異変に気づき、顔色を変える。
服で何とか隠しているようだが、首や手首に歯型や
赤い腫れ痕が見え、思わず眉を顰めてナナシの目を
真っ直ぐ見つめた。