第28章 何故、こうなったのか?
二人を乗せた馬が兵団の敷地を出る時、ミケが視線を感じ
振り返ると、執務室の窓から此方を見つめるエルヴィンの姿が
目に入った。
思わず睨んでしまったが、エルヴィンはそんなミケなど
目に入っていなかったようで、目線はミケを通り越して
フードを被っている人物に注がれていた。
エルヴィンが何を思い、ナナシにこんな酷い事をしたのか
ミケにはわからなかったが、この場から見逃してくれると
言うなら正直有り難い。
エルヴィンは追う素振りも、焦っている様子もなく、
ジッと静かにナナシを見つめていた。
「・・・・ミケ・・・?」
掠れた声でそう呼ばれ、ミケはハッと我に返って前を向き、
心配そうに見上げてくるナナシの頭を軽く撫でる。
「すまん。何でもない・・・」
「・・・そう・・か・・・」
恐らくナナシは自分の反応で気づいたのだろう。
エルヴィンが此方を見ている事に・・・。
だが、俯いたきりそれに言及する事もなく、
二人は調査兵団本部を後にした。