第27章 ●罪悪の時間
「眷属達が恨むとしたら、それは俺だ。俺が君を離そうとしない
ばかりに、君の罪が重くなり眷属達の罰も重くなった。
それが全てだ、ナナシ」
――違う!
エルヴィンは何も悪くないっ!
自分が煮え切らない態度で彼を困らせているだけなのに、
何故自分の罪過まで背負おうとしてしまうのか・・・。
彼に罪を被せてしまったら、自分は本当に卑怯者になってしまう。
ナナシの瞳からじわりと涙が溢れてきて、それに構わず
ブンブンと首を横に振ると、涙は下に落ちて膝を濡らした。
エルヴィンは向かいのソファからナナシの傍へ移動してきて、
ナナシの涙を静かに拭う。
ナナシは涙を拭ってくれるエルヴィンの手を取り、
真っ直ぐ彼の目を見つめた。
「エルヴィン、ありがとう。こんな私の為にそこまで言ってくれて
・・・正直、嬉しい」
「ナナシ・・・」
「・・・だが、お主のその申し出はやはり受けられない。
これは私の罪過であってお主のものではないし、
もしもお主の言う通りお主のせいにしてしまったら、
私は本当に卑怯者になってしまう。やはり、ここは一度
離婚すべきだ。お主と離婚したとしても、それは書類上だけの事だし、
色々考えたがそれが一番だと考える。明日になったら
役所に離婚届を貰いに行ってくるから、サインしてくれ
エルヴィン」
例え離婚したとしても自分は死ぬまでエルヴィンと一緒に
いるつもりだし、書類上の『契約』が無くなれば
眷属達の罪も軽くなるかもしれない。
そう思って考えを伝えると、エルヴィンは仄暗い瞳で
ナナシを見つめ、無言のまま突然キスをしてきた。