第27章 ●罪悪の時間
「お主はいつも勝手過ぎる!私が嫌だと訴えても聞いてくれない!
そんな輩の言動など予測出来ぬし、結婚に関しては半分
お主のせいだっ!」
吐き捨てるようにエルヴィンを責めてしまったナナシは
「しまった」と思ったが、一度出た言葉は戻せない。
自分の落ち度をエルヴィンのせいにしようとした自分の
浅ましさを嫌悪し、すぐに謝ろうと口を開きかけたが
「その通りだ、ナナシ」
という言葉に、思考が止まる。
エルヴィンは真っ直ぐナナシを見据えながら、
静かながらも意志の強そうな声で言った。
「君と俺に関する全ての事は俺の責任だ。君は何も悪くない。
君は俺に強要され騙され一緒にいるように仕向けられた。
君はただの被害者だ」
一瞬、エルヴィンが何を言っているのかわからず逡巡したが、
少しして彼がどういうつもりでそう言っているのかわかり
否定する。
「ち、違うっ!これは私の意志で・・・っ!」
「いいや、違わない。君は俺に強要されている。君の人の良さに
付け込んで俺から離れないように画策している」
「エルヴィン、それは・・・っ!」
「全部、俺のせいなんだ。だから、君は何も罪悪感を抱く
必要はない」
何か言いかける度に言葉を被せて遮ってくるエルヴィンが、
ナナシの罪を全部自分のものとして被ろうとしているのが
ありありとわかった。
ナナシが必死にそれは違うと否定しても、彼は頑として
譲ろうとはしなかった。