第27章 ●罪悪の時間
「君の自己犠牲の精神は美しいものだとは思うが、
今それを発揮されると俺が不幸になる。君は俺が不幸に
なっても良いと受け取っても?」
「そんな事は・・・」
「だが、実際君は俺を不幸にしようとしている。愛する者が
やっと戻ってきたと舞い上がっていたら、自己犠牲の塊である
君の考えによって奈落の底に突き落とされそうになっている。
君は眷属達の事は考えているようだが、俺の気持ちは
考えているのか?」
責められるように言われたが、何も反論出来ずナナシは
膝に置いた拳をぎゅっと握り込んで、沈黙を貫く。
責められても仕方ない事だと思い、ナナシはこれから
エルヴィンから受けるだろう罵倒を受ける覚悟を決める。
「黙っていてはわからない。何か言う事は無いのか?」
「・・・・・・・・すまないと・・・思っている」
「それだけか?」
「・・・結婚はしたくないと伝えていた・・・」
「そうだな。君は頑固だからいつもの事だと考え、
強硬手段を取った。何故会った時、事情を話さなかった?」
合意なしで結婚させられた事を少し責めてしまったが、
エルヴィンはそんなものどこ吹く風と言った風で流してしまった。
逆ギレかもしれないが、それには少しカチンと来て
ナナシも言い返す。
「お主はいつも強引で・・・私の話などまともに聞いてくれぬ
ではないか。まさか騙して婚姻届を出されるとは思わなかったから
言う必要もないと思った」
「君の話はきちんと聞いている。その願いをきくかどうかは
別問題だ」
その言い草にナナシは怒りが湧いた。