第27章 ●罪悪の時間
「それは答えになっていない。君は今日嘘ばかり吐いている。
君は自分の為の嘘は吐かないが、他人の為なら嘘を吐く。
・・・一体誰を庇っているんだ?」
「・・・・・・・庇っている訳ではない・・・」
――そう、・・・庇っている訳ではなく、ナナシのせいで
眷属達の立場が危うくなっているのだ。
「違うんだ、エルヴィン・・・。庇っているのではなく、
私のせいで眷属達が罰を受けてしまうかもしれぬのだ」
「それは・・・どういう事だ?」
ナナシが言いたかった本題をやっと切り出すと、
エルヴィンが真剣な眼差しでナナシを見据えていた。
「私が結婚したくなかった理由がそれだ・・・。私が禁を
犯せば犯すほど連帯責任として眷属達にも咎が及んでしまうのだ。
・・・つまり、私がお主達と深い仲になればなるほど
罪が重くなって・・・・それで・・・」
多分ここまで言えば聡いエルヴィンにはわかるだろう・・・。
ナナシはここから先の言葉がなかなか出ず、恐る恐る
エルヴィンを見ると、案の定彼は膝の上に乗せた拳を
強く握り締め、辛そうな顔でナナシを見つめていた。
「私は・・・お主の事は好きだが、家族同然で暮らしてきた
眷属達も大事なんだ。だから・・・離婚してほしい」
「・・・離婚すれば、君の罪は軽くなるのか?」
感情を殺すように絞り出たエルヴィンの言葉に、
ナナシは首を横に振り「わからない」と告げる。