第26章 迷い
「お願いだから行かないでくれ。夜まで待つ。君の言う通り
仕事もきちんとする。・・・だから、今日はずっとここに
いてくれ、ナナシ」
「・・・わかった。今日はずっとここにいる」
素直に従ったナナシに満足そうに微笑んだエルヴィンだったが、
ふといたずら心が沸いた。
「頑張る夫に少しご褒美をくれないか?」
「え・・・?」
ナナシの返事を聞く前に、エルヴィンはその唇に深い口付けを
落とし、細い身体を抱く腕に更に力を込める。
突然の事に驚いたナナシは最初エルヴィンの身体を
押し戻そうとしたが、口内に潜り込まれた舌に翻弄されていく内、
力が入らなくなり早々に抵抗を諦め両腕を彼の首に回した。
「・・・んっ・・・」
くぐもった声とクチュクチュと漏れる水音だけが室内に響く。
やがてエルヴィンはナナシを抱いたままソファに横たわり、
押さえ込むような形になりながらその身体に手を這わせた。
大きな手がナナシの太腿や胸部に触れると、塞いだ口から
甘い嬌声が漏れるのがわかり、その部分を一層優しく撫で上げる。
いつの間にかナナシの股の間にエルヴィンの身体が滑り込んでいて、
彼の太腿がナナシの下半身を刺激するように擦り始めた。
トロンとする意識の中、今はダメだと思うものの快楽に弱い
ナナシの身体にはエルヴィンを拒否する力は残されていなかった。