第26章 迷い
一呼吸置いたミケは、重い口を開く。
「さっき厩で会った。夜になったらエルヴィンの所に行くと
言っていたから、おまえはそれまでちゃんと仕事を…」
「何故それを私にすぐ報告しないっ!?」
ミケの言葉を遮って叫んだエルヴィンはガタッと椅子から
立ち上がり、足早に執務室を出て行こうとしたが、
ミケに羽交い締めにされジタバタする。
「邪魔をするな、ミケ!私は私の妻に会いに行くだけだ!
ナナシがいるのに夜まで待ってなどいられるかっ!」
「落ち着け!そのナナシは自分がいてはエルヴィンの
仕事の邪魔になるだろうからと気を利かせてくれて…」
「気を使ってくれる嫁は大変可愛らしく思うが、
そんな気遣いじゃなくて、すぐ私に会いに来て挨拶のハグと
キスをしてくれる気遣いが欲しいっ!!」
「ナナシはおまえに一度もそんな事したことないだろっ!?」
「あぁ、私のナナシは大変奥ゆかしい性格だからね!
恥ずかしがっている姿が最高に唆るじゃないかっ!」
段々支離滅裂になってきたエルヴィンの主張にミケの頭が
痛くなってくる。