第4章 古城にて
「ペトラ、兵長からの命令でナナシさんにおまえの着替えを
貸して欲しいとの事だ。あと、兵長達が戻るまでナナシさんを
監視して逃げないようにしろと言われた」
「わかったわ。・・・さぁ、ナナシさん私の部屋へどうぞ」
「・・・・ちょっと、待てコラ。縛られたままでは着替えも
出来ぬではないかっ!やっぱりワイヤーを切れ!」
無茶ぶりを言ってくる二人にそう言えば、
二人は「どうしよう」と悩んでいるようだった。
ここでワイヤーを切って逃げられたら兵長に怒られるだけじゃなく、
団長にまで怒られるだろう。
そんな二人の葛藤を垣間見て、ナナシは一つ溜息を吐くと、
筋肉操作で肉体を強化し自分でワイヤーを引き千切った。
それを見た二人は口を大きく開けて愕然とする。
「・・・もう良い、自分で切った方が早かった。
こうした方がお主達も責められんだろうしな」
リヴァイの命令に忠実な二人が拘束を解く事を
躊躇するのもわかるので責める気も起きない。
ナナシは観念して二人に言った。
「リヴァイが帰るまでは逃げぬから、古城では自由でいさせてくれ。
これを飲んでくれないと逃げるぞ?」
「わ、わかりました!なので、お願いだから逃げないで下さい!」
頭を下げる二人に頷くと、ナナシはペトラに伴われ
彼女の部屋へ行き、着替えを借りた。
ここで何故ペトラの兵服を借りるのか、という疑問は
誰も口にしない。
ナナシの背丈や体格を思えば、エルド達のものでは
ぶかぶかだし(リヴァイのも少しぶかぶか)、
サイズが近いのがペトラしかいなかったという消去法だろうと
ナナシは思っていたが、リヴァイ班の皆がナナシの事を
『自分を男と思い込んでいる女』と未だに信じ込んでいるなどとは
知る由もなかった。