第22章 相手は誰だ!?
「もしも君がこの件で誰かに頼った場合、私はそいつが
誰であろうと徹底的に潰す。それが例え憲兵団師団長で
あろうとも、駐屯兵団司令であろうとも一切手を抜かない。
これで調査兵団が他兵団と軋轢を生む羽目になったら、
それは君のせいだナナシ。君は仲の良い調査兵団兵士達が
困るような真似をする子じゃないだろう?違うかい?」
―――調査兵団団長が調査兵団組織の立場を人質に
取ってきやがった・・・・っ!!
普通に考えれば、ナナシにとって調査兵団は仮宿のようなものに
過ぎないので無視すれば良いはずなのだが・・・
お人好しの性格が災いとなってそれも出来ず、唸るしか無い。
以前誰かがエルヴィンの事を『悪魔』と罵っていたが、
今ならそれが理解出来る。
こいつは正に悪魔だっ!!
ナナシの思考を読み、退路を断つ先手を打ってみせた
エルヴィンは優雅に微笑んでいて、普段ならカッコイイと
思えるのに、今はそれが悪魔の微笑にしか見えない。
エルヴィンは有言実行の男だ。
やると言ったら絶対やってみせるだろう。
ありとあらゆる道を閉ざされたナナシはあまりの仕打ちに
ソファの上に突っ伏した。
「エルヴィンなんか嫌いだ・・・」
「私は君の事を愛しているよ」
「・・・・・・・」
もう何を言っても無駄なのだと半分諦めたナナシは、
絶望した頭でも午後の仕事はキッチリこなしたのだった。