第20章 それぞれの愛
「あの時は・・・すまなかった。身体がもう保たなくて・・・・」
「いや、君が気に病む事は無い。幸せな一時を過ごせて俺は
良かったと思っている」
「置いていくのが、あんなに辛いものだと初めて知った」
「俺を置いていく事を辛いと思ってくれているだけで、
俺は報われているよ、ナナシ」
「エルヴィン・・・・」
自然とエルヴィンの顔が近づいてきて、ナナシに優しい
キスを与えた。
「昼間は・・・すまなかった。君にも色々事情があるというのは
わかっているつもりだったが、何の相談にも乗れない自分が
歯痒くて、ついあんな態度を・・・・」
「謝らなければならぬのは私の方だ。伝えたいのに
伝えられない事が多過ぎて、お主を傷つけていると思う」
チュッとナナシにキスを落とすと、擽ったそうに目を細めるのが
可愛くて、エルヴィンは次々キスを降らせていった。
やがて、エルヴィンは色々と我慢出来なくなりナナシを
お姫様抱っこすると、仮眠室へ向かった。
そこで漸く我に返ったナナシが「ダメだっ!」と初めて抵抗を見せる。