第20章 それぞれの愛
「やぁ、早く入りなさい」
「・・・お邪魔します」
団長執務室には既に食事が運ばれていたらしく、
エルヴィンとナナシの分の食事がテーブルの上に置かれていた。
エルヴィンはナナシが来るのを待っていたようで、
ソファに座りながら笑顔でナナシを迎え入れる。
気不味い空気の中二人で「頂きます」と両手を合わせて
食事を始めたが、時折エルヴィンが事務的に
「訓練メニューの進捗状況はどうなっている?」と聞くだけで、
暫くの間先程の事に触れようともしなかったが、
食事が終盤に差し掛かると、彼は不意に尋ねた。
「そう言えば、君の眷属達はどうしている?」
「――――っ!?」
まさかエルヴィンからそんな事を聞かれるとは思わず、
ナナシは口に運んでいたパンを喉に詰まらせそうになった。
「・・・家に・・・いる」
「全員息災か?」
「あぁ・・・」
「そうか・・・・」
「・・・・・・・・」
息災ではあるが、眷属達はナナシのせいで暫くこの世界には
来られない罰則を受けてしまっている。
今出来るのはナナシに物資を提供するくらいだ。
それをエルヴィンに伝えるか悩んだが、
ナナシは口を閉ざす選択肢を選ぶ。
やはりエルヴィンには一切自分達の罪過及び罰則の事を
知られたくはなかった。