第16章 どうしようもない男
「・・・それで、何の話があったのだろうか?
エルヴィンは・・・・」
昔のように花茶を淹れ、優雅にお茶を飲むナナシは
漸く本来の目的を思い出したらしく、持ってきた荷物から
書類の束を出したが、エルヴィンは廃人となっている為、
代わりにミケが答える。
「エルヴィンの用件は、エレンの経過報告とナナシがいない間
入団した兵士のデータ収集及び、簡単な訓練メニュー作成だが
・・・・・本音としては少しでもおまえと一緒に
いたかったんだと思う。おまえが泊まれるように
残していた部屋を綺麗に掃除してたからな・・・」
「ふむ・・・・」
後半は聞かなかった事にして、ナナシはエレンの報告書を
テーブルの上に広げた。
「まだまだデータ不足だが、一言で言えばエレンの技量は
何もかも足りぬ。それで、私がいない間、入団した者の人数は?
名簿があれば助かるのだが・・・」
「エルヴィンが持っているはずだが・・・・・」
チラリとミケはエルヴィンに視線を向けたが、
彼はまだ廃人のまま戻ってきていない。
あのエルヴィンがこうなるなんて、一体どんな痛みを味わったのやら・・・。
ナナシは深く溜息を吐くと、徐ろにエルヴィンの上に乗っかり、
チュッと彼の厚い唇にキスを落とした。