第16章 どうしようもない男
ミケとナナバは震えながら執務室の前で蹲っていた。
時折聞こえるエルヴィンの呻き声に何度助けに行こうかと思ったが、
元を正せば彼の自業自得な上、とばっちりを受けて
自分達まで躾と称した拷問を受けたくはない。
「・・・・もう、どれくらい経ったかな・・・・?」
「・・・・・・一時間は経つな」
「エルヴィン、生きてるかな?」
「死んでたら呻き声は聞こえないだろう。まだ生きてるはずだ」
「相当・・・怒ってたよね、ナナシ」
「相当どころか、殺す勢いだろ。あれは・・・・」
「いっそ、殺してくれた方がマシだったりして・・・」
「確実にそうだな」
ナナバとミケは同時に溜息を吐いた。
全部エルヴィンが招いた事だ。
赤裸々な床事情などを書いて本にするからいけないのだ。
本人の許可無くやればナナシでなくとも誰だって怒ると思う。
だから、今拷問紛いの躾を受けても仕方ないのだと、
二人は何度目かになる言葉を頭の中で反芻した。