第16章 どうしようもない男
「―――ナナシっ!待ってい・・・ぐふっ!!」
ナナシは入室するなり抱き着いて来ようとした
エルヴィン・スミスにまず回転蹴りをお見舞いし、
倒れ込んだ所で更に追い打ちを掛けるように
両腕足の関節を外してやった。
突然の行動にミケとナナバも驚愕に目を剥いている。
「な、ナナシ・・・いきなり、どうしたと言うんだ?」
「それはお主の胸に聞いてみるが良い」
「聞いてみてもわからないから、尋ねているのだが?」
痛みで呻きながら言葉を返してくるエルヴィンに、
ナナシは冷たい目を向けた。
「聞いた話によると、『例の本』とやらは全十冊ではなく、
全五十冊あるそうではないか?」
それを聞いた瞬間、エルヴィンの顔色が変わり、
ナナシの後ろにいたミケ達を睨んだ。
睨まれたミケとナナバは首を横に振り
「何も教えていない」というジェスチャーをする。
「お主は私にその事を言わなかった。誠実ではない男は好かん。
だから、今お主は関節を外され床に転がされている。
・・・理解出来たか?」
「・・・大体の状況は把握した。だが、隠していた訳ではなく
何冊あるか聞かれなかったから答えなかっただけで
・・・・・がはっ!」
ナナシは容赦なくエルヴィンの腹を踏みつけた。