第16章 どうしようもない男
「エルヴィンは素直に渡さなかったのか?」
「素直に渡すと思うか?」
ミケとナナバは溜息を吐きながら、事の仔細を教えてくれた。
一昨日、本部に帰ってきたエルヴィンはすぐミケとナナバを
執務室へ呼び出し、紙袋からナナシの作ったコロッケサンドを
二人に見せたそうだ。
・・・そして、こう言った。
「このコロッケサンドはナナシが『私の為』に作って
持たせてくれたものだが、気を利かせた私の嫁は慈悲深きことに
ミケやナナバにも・・・と計3つ寄越してきた。
だが、このコロッケサンドにはナナシの私への愛がいっぱい
詰まっている。それを他人に渡すなど出来ると思うか?
いや、出来まい!・・・という訳で、実物は見せた。
このコロッケサンドは3つとも私が頂く」
「ふざけんなっ!!」
「それが言いたかっただけかっ!!」
憤慨したミケとナナバは協力してエルヴィンから
コロッケサンドを奪取し、食したという・・・・。