第16章 どうしようもない男
調査兵団本部に着くと、懐かしさで胸がいっぱいになった。
たった一年半離れていただけだというのに、
ナナシにとってここが大事な場所になっているのだと
改めて実感する。
馬から降りると、どこからともなく「ナナシーっ!」という声が
聞こえてきて、気がつけばその声の主は勢い良くナナシに
抱き着いてきた。
「ナナシ、久し振り!本当に良かった!戻ってきてくれて
嬉しいよ!あと、コロッケサンドありがとう!凄く美味しかったよ!」
「ナナバ・・・・」
いつもクールな彼女らしからぬ興奮した様子にナナシは
目を丸くしたが、それも何も告げずに死んだナナシのせいだろう。
こうやって昔のように受け入れてくれるナナバの温もりが
嬉しかった。
ナナバにギュウギュウ抱き締められていると、
後から悠然と歩いてきたミケがナナシの首筋に顔を埋め、
スンと鼻を鳴らした。
「おかえり・・・」
平然とそんな事を言ってきたミケに恥ずかしい気持ちになりながら、
ナナシは「ただいま」と返す。
まさか「おかえり」なんて言って貰えるなんて思ってもみなかった。
「エルヴィンがちゃんとお使いを果たしてくれたようで
安心した。途中で二人の分まで食ってしまうんじゃないかと
心配しておったのだ」
「・・・・・あぁ・・・うん」
「・・・・そう・・・だな」
歯切れが悪くなった二人にナナシは、すぐ何かあったのだと悟る。