第13章 駄々
「えっ!?このパン、ナナシさんが焼いたんですかっ!?」
「うむ。本当は夕食用なのだが、焼きたての方が美味いだろう?
遠慮せず食え」
「いただきまーす!」
エレンの健康診断が終わり、遅い昼食を取りに
食堂にやってきたエレンに、ナナシは温め直したスープと
焼き立てパンを出してやると彼はとても嬉しそうに
食べ始めた。
やはりパンは焼き立てが一番だよな、と満足そうに見つめていると、
エレンがキラキラした顔でナナシを見つめる。
「もしかして、俺の為に作ってくれたんですか!?」
「それは・・・」
「違うぞ、エレン。ナナシは私に持たせるコロッケサンドの為に
パンを焼いただけで他意は無いそうだ。パンを一個焼くなら
皆の分も作ってあげようと思ってくれたらしい」
ナナシの言葉を遮って、そう言ったのはエルヴィンで・・・
テーブルの上に両手を組んでジッとエレンを見据えていた。
大人気ないエルヴィンの対応に足を蹴ってやると、
痛かったのか彼は組んだ両手に顔を埋めた。