第13章 駄々
「君は・・・私よりパンを取るのか?・・・私よりもパンを・・・・」
何やらブツブツと譫言を呟き始めたエルヴィンに、
ナナシはムッとしながら答える。
「このパンはお主に持たせる為のモノなのだぞ!
失敗なんぞしてたまるか」
それを聞いた瞬間、エルヴィンはガバっと起き上がり
期待に満ちた目をしてナナシを見つめた。
「それは『私の為』に作ってくれたパンという事かっ!?
いつもの硬いパンではなく、ナナシお手製のパンをわざわざ
『私の為』にっ!!」
やたら『私の為』を強調するエルヴィンにややゲンナリしながらも
素直に頷くと、エルヴィンは満面の笑みをナナシに向けた。
「持ち帰りやすいようにコロッケサンドにしようかと思ってな・・・」
「ありがとう。本当に嬉しいよ。何て気配りの利く嫁だ」
「・・・・嫁ではない」
「そうだね。『まだ』嫁じゃないが、いずれは私の嫁だよ」
「・・・・・・・・・・・」
これ以上問答するのも面倒になった為、
ナナシが無視を決め込み支度をしていると、
グンタがやってきた。