第13章 駄々
「いい歳して嫉妬深く変態でどうしようもない顔だけの
おっさんより、前途有望な少年に乗り換えるのも悪くはないな。
ここまで疑われてはそれも視野に入れて自分好みの男に育てて・・・・」
「やめてくれ、ナナシ!冗談でもそんな事を言わないでくれ!
私が悪かった!少しでも疑った私を許してくれ!」
叫びながら思いっきり抱き着いてきた大きな巨体に、
ナナシは「やれやれ・・・」と思う。
大きなナリをして甘えん坊な団長様はエレンより子供のようだ。
子供のように全身で「見捨てないで」と訴えてくる様は、
少し可愛らしく思えるが、今はそんな事よりオーブンから
パンを出すことの方が先決である。
ベリっとエルヴィンを引き剥がし、焼いていたパンを
オーブンの中から出すと、芳ばしい匂いが厨房内に広がった。
引き剥がされたエルヴィンの手は所在なげに空を漂っていて、
彼はポカンと口を開けていた。
「うん、良い焼き上がりだ」
作ったパンの出来上がりに満足しながら頷くと、
エルヴィンは床に膝をついて崩れ落ちた。