The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第7章 Floor B4 ー地下4階ー
「……ザック。」
その寒い部屋から出る間際……。
レイが、ザックのその背中に向かって名を呼び、相手を呼び止めた。
「あ?
なんだよ?」
振り返ったザックをじっと見つめて、レイは続ける。
私はただただ黙って2人のやり取りを見ていた……。
「……あなたは、ここのこと、よく知っているの?」
気怠そうなザックのそんな顔を見つめ続けて、レイはそう訊ねる。
「……さぁな。
俺は、殺したい奴を殺していいって言われてここに来ただけだしな。
他のフロアの奴もそうなんじゃねぇのか?
……細かいことは、俺も知らねぇけどよ。」
「……そう。」
ザックの返答に、レイはつまらなさそうな、興味がなさそうな……。
そんな言葉を静かに返した。
ー ____殺したい奴を ー
ー 殺していい ー
その言葉は、私の胸中で何かを警告するかのように深く響いていた。
私は、その言葉に何故か引っかかりを覚えたのだ。
私は…。
ゆっくりと口を開いた。
『……ザック。
君は、ここに来る前は、何処にいたんだ……?』
「……教えても良いけどよ。
そんなこと知って、何になんだよ?」
私のそんな些細な疑問に、ザックはレイに向けていた視線を私に向けた。
その声には面倒そうな雰囲気が含まれている。
『……別に。
ちょっと、気になっただけ……。』