The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第7章 Floor B4 ー地下4階ー
……その水からは、何故か薬品の匂いがする。
気づいてはいたが、エレベーター前の水場の部屋でも同じ香りを嗅いだ気がする……。
……きっと、レイも気づいているはずだ。
壁から絶え間なく注がれるその水は、プールのような……水の張られた場所に溜まっていく……。
そのプールの底には、人影のような物が沈んでいる。
……おそらくは、死体なのだろう。
ボロボロの壁には、"洗浄中"というプレートが掲げられている。
そのプールのような水場には、木材で出来た橋がかかっている。
……少し、怖いな……。
渡るのを少し躊躇う私とは違って、レイは淡々とその橋を渡っていく。
ザックも、当然ながら臆することなくその後に続いた。
橋の先の方は、壁によって塞がれて行き止まりになっている。
……近くで見るととてもよくわかる。
その壁は湿気の所為なのか…脆くなっていて、ところどころひび割れてしまっている。
「壁がボロボロ……。」
「……ったく。
湿っぽいわ、ボロいわ……。
ろくな場所じゃねぇな。」
レイの呟きに、ザックが愚痴を零した。
……不気味だ…。
壁に歩み寄った私は、そんなことを考えつつ、そのボロボロの壁を撫でてみた。
……なんだか、あの悪夢を思い出してしまいそうで…、嫌だった。