The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第6章 Daydream ー夢ー
視界が白い光に満たされて、フェードアウトした。
……次に見えたのは……。
暗闇。
……正確にいえば、何も見えていない。
強い鉄臭い匂いが鼻をつく。
むせ返るほどに強い匂いだった……。
ー……ピチャッ……ー
歩く度に、水の跳ねるような感覚と音が聞こえる。
『っ……あ…………。』
足元には、先程まで生きていたのであろう。
何かの生物のまだ生暖かい死骸と、その生物のものであろう血液が、
どこまでも、どこまでも……広がっていた…………。
そこらじゅう、紅、紅、紅……_____
『……な、なんなんだ。
これは……。』
《……おや?
もう、お忘れですか……?》
『っ!?
だ、誰だ……!?』
絶句した私に届く声があった。
それは、地を震わせ、直接私の脳に語りかけてくるような……。
そんな低く重い…黒い声だった。
そんな声に驚いた私は、辺りを忙しなく見回した。
……鉄の匂いが濃い。
今にでも吐いてしまいそうだ。
……目眩がする。
頭がクラクラして、視界がチカチカして……。
本当に気分が悪い。
『っ……‼
誰だと聞いているっ‼答えろ……っ‼』
しびれを切らせた私は、吐き捨てるように言う。
すぐ近くで、息遣いが聞こえる気がする……。
その息遣いは、何かを考え込むようにしているようだった。
……気味が悪い。
なんなんだ…。
ここは……。