The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第6章 Daydream ー夢ー
その言葉は、ストン……と落ちるように私の心の中に入り込んできて、私の迷いや悩みを馬鹿馬鹿しいと思ってしまうくらいに消し去ってしまった。
……ああ。
私は、この人を知っているんだ……。
『……やはり、貴女には敵いませんね、シスター……。』
「……あら。そんなことありませんよ。
悠、私はね。
貴女に、今までたくさん救われたのよ……。」
老女はそっと私に歩み寄る。
深くしわの刻まれた手で、苦笑して言う私の手をそっとすくい取ったその老女は、穏やかに微笑んで言った。
『…救われた……?』
意味を理解出来なかった私は、そのままオウム返しで訊ね返す。
「……ええ。
貴女がいてくれただけで、私は救われたのよ……。」
その老女は、そんな優しい言葉と共に……白い光に包まれて色褪せていく……。
『っ……‼
待ってくださいっ‼
まだ、聞きたいことがたくさんあります……‼
あなたは、何処にいらっしゃるのですか……!?』
色褪せていく老女は、少しだけ驚いたような顔をしてから、泣き笑いのような悲しい笑みを浮かべて、静かに首を左右に振ったのだった……。