The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第6章 Daydream ー夢ー
ふと我に返ったその時……。
今度の私は、海にいた。
……もっと正確にいえば、足首が埋まる程度の海の浅瀬の中で、素足で突っ立っていた。
……あれ?
ここは……何処だっけ……?
吹き付ける心地よい潮風と、足を攫おうとする柔らかくもひんやりと冷たい波に、私は首を傾げる。
「……悠。
そんなところで、何をしているのですか?
いくら海が好きで今が9月でも暑いとはいえ、日が落ちる頃はもう寒い……。
風邪をひいてしまいますよ。」
振り返ると、そこには声の主がいた……。
シスター服を着たその老女は、私に穏やかに微笑んだ。
……たぶん。知らない人。
けれど、何故だかとても懐かしい気がする……。
『……シスター。
私は、何処へ向かったら良いのでしょう。
……なんだか、とても疲れてしまいました。』
海から陸の方へと戻った私は、その老女に問うた。
老女は穏やかに、けれども鋭く言い放った。
「……それは、貴女自身が決めることです。
ですが、人は迷ってしまう哀れな生き物…。
どうしても迷ってしまうと言うのなら、神の御導きに従いなさいな。
……全ては、神の御導きのままに……。」
老女は、祈るように自身の胸元で手を重ねて言った。