The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第2章 The dawn ー始まりー
『……っと。
まだ、こっち側には行けそうもないな……。』
歩いている最中の見つけたフェンスに手をかけ奥を覗いてみる。
掴んで揺すってみるが、フェンスは到底開きそうにない…。
「カードキーみたいなものが、必要……。」
レイチェルが壁にある装置を見つめながら言う。
私もそれをじっと見つめて続けた。
『……みたいだね。
…奥は、どうやらエレベーターみたいだし……。』
「…あれが、読めたの……?」
レイチェルの呟きに、目を細めつつ答えると、レイチェルは驚いたように言って私を見上げた。
…今度のその淡くも暗いひとみには、ほんの少しだけ驚きの色が滲み出ていた……。
『……ん?
あー。まぁ、ね…。
少しばかり、他の人より視力が高いんだ……。』
「……そう。」
ふっと笑って言うと、レイチェルはまるで興味を無くしてしまったかのような静かな口調でそう答えた。
『……じゃあ、こっちの方へ行ってみようか。』
私は、フェンスにかけていた手をするり…と離して、廊下の奥の方を人差し指で指し示しながら、気を取り直すように…努めて明るく言う。
「……うん。」
レイチェルはコクリと1つ頷いて…少女とは思えないような、落ち着いた声音で私にそう答えた。