The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第4章 Serial killer ー殺人鬼ー
完全に音や気配が絶えて、少ししてから…私は物陰からゆっくりと慎重に顔を出す。
…あの男が馬鹿で助かった。
私はレイチェルを押し込んだ木箱へと歩み寄り、こう言った。
『…レイチェル。
もう、大丈夫だよ……。』
「…うん。」
木箱は無傷だ。
レイチェルの無事に再び安堵して息を吐くと、レイチェルが木箱を開けて、ひょっこりとその木箱から顔を出してそう言った。
レイチェルは木箱から出て、殺人鬼が去ったであろう方のドアへと歩み寄り、そのドアをじっと見つめてこう続ける。
「…戻ってこない、よね……?」
『…たぶん。
しばらくは大丈夫だと思うよ…。』
彼女のその不安そうな声に私は、安心させようと根拠の無いことを言う。
だが、レイチェルはそのドアとの距離を更に詰めて言った。
「…開いてる。
ねぇ、悠……。
こっちの方へいってみようよ…。」
『…え"……。』
私が変な声を上げたのは、言うまでもない……。