The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第23章 Escape -脱出-
『……レイがそれで良いのなら、
きっと、その選択は正しいよ。』
ゆっくりと瞼を押し上げた私は、静かに言う。
視界には、
私をじっと見つめる2人の姿が映った。
それからザックが笑った。
「ああ、そうだな。
悠、お前もたまには
良いこと言うじゃねぇか!
レイが良けりゃ、それで良いんだよ!」
「…………うん。」
ザックの言い方に少し引っ掛かりを覚えたものの、
レイの物憂げに微笑むその表情に、
それらを振り払った。
- チン… -
エレベーターが止まって、
座っていたザックが立ち上がる。
「…おら。
もうちょっとで地上だ!
行くぞ!!」
『…わかってるってば。』
ザックの嬉しそうな声に呆れた様に返して、
私も立ち上がる,。
「…出口の所在は、
既に調べてあります。」
セバスチャンがそう言うと、
ザックが満足そうに笑って声を上げる。
「しつじ!!
お前も、たまには良い仕事するじゃねぇか!!」
エレベーターを後にして、
大聖堂の、1番大きなステンドグラス……____
独りでに音を奏で、赤く濡れた楽譜のあるオルガン。
それが、大きく横にずらされている。
「……こちらです。」
セバスチャンが大きなステンドグラスの中央を
白い手袋をしたその綺麗な手でそっと押す。
- …ギィ… -
音を立てて、
そのステンドグラスはまるで扉のように
開かれたのだった。