The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第23章 Escape -脱出-
……そこで、私が見たものは……。
『っ……!?』
「…おや。
やはり、先に言っておくべきでしたか。」
『な…。』
「……。」
驚いた私の後を追ってきたセバスチャンが
微笑みながら言う。
驚いて絶句するザックに、無感情な瞳でそれを見つめるレイ。
『……セバスチャン、何故このようなことを?
ここまでする必要があったのか?
死者に対する冒涜では?』
そこには、死体があったはずだった。
……ダニー先生の。
……だが、それは私達が最後に見たものとは異なり、
頭と胴体が斬り離され、血飛沫をあげた
ダニー先生だった肉塊だ。
セバスチャンを振り返って言う。
だが、彼は何を思っているのか、薄く笑うだけだった…。
「……とりあえず、先に進もうぜ。」
ザックが痺れを切らした様に言って、
再び歩を進め始めた。
……そうだ。
今は、前に進まなくてはならない。
ザックの背中にレイが続いて、
キッチンの方へと姿を消した。
私も、行かなきゃ…。
1歩踏み出した丁度その時……
「…お嬢様。」
セバスチャンに呼び止められて、
私は動きを止めて身を強ばらせた。
『…………何。』
彼を振り返ることなく、静かに答える。