The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第22章 Way out -出口-
レイの返答に、私は思わず困惑してしまう。
…その時……
ザックが不機嫌そうな声を上げた。
「それは、お前が…
死んだ奴の知り合いだからだろ?
……そいつが死んだってことは、
それはお前の所に戻ってくるんだろ?」
『あ……。』
……そっか。
シスターの……____
「……形見。
…そう言うんでしょ?そういう物って……。」
レイも私の手元の聖書を見つめて言う。
私の心の中の声と、
ザックやレイの声が綺麗に重なって、
私の心臓がドクンッ…と、強く脈打つ。
何処かに引っかかった物がゆっくりと降りてきて、
私の中に溶け込んでいく…。
そんな気がした……。
「…な、なんだよ、その顔…。
文字は書けねぇし、読めねぇが、
それくらい俺だってわかる。」
ザックがレイと私の視線に頬を掻きながら、顔を逸らしつつ言う。
『う、うん…。
そうだったね。』
なんだかこちらも、おかしくなって小さく笑いながらそう答える。
大切な人の大切にしていたもの。
どうして忘れていたのだろう。
私は聖書の表紙を、懐かしく思ってそっと撫でた。
…………すると、
「…じゃあ、行こう。
2人とも。」
「…お、おう。」
『そ、そうだね。』
完全に自分の世界に入り込んでしまっていた私は。
レイの声にビクリッ!と肩を震わせる。
それはザックも同じだったようで、
小さく肩を震わせてレイを見たあと、
少し不服そうに頭を掻いた。