The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第22章 Way out -出口-
……あれから、
どれほど時間が経ったのだろうか…。
長い時間、その場に座り込んでいたような気がする……。
「…………。」
「……おい。
いつまでも鼻水すすってんじゃねぇよ。」
ぐすぐすと、小さく鼻をすするレイに、ザックが言う。
「…でも、鼻から勝手に流れ出てくるから……。」
「バカ。
んなこと、言わなくて良いんだよ。
これからここを出んだ。
どーにかしろよ。」
「……うん。」
レイはザックの前向きな言葉に、小さく微笑んだ。
『レイ…。
ほら、これ使って…。』
「あ、ありがとう…。」
私はポケットティッシュを手渡す。
レイは少し照れて頬を赤く染めながら、
私からポケットティッシュを受け取ってくれた。
鼻をかみ終えたレイに、
タイミングを見計らったザックが、退屈そうに訊ねた。
「ってか、
ここはお前のフロアだろ?
出口、わかってんのか?」
「……実は、
ここから上に上がる記憶は、ないの……____」
「あぁ?……マジかよ。」
レイの答えに、ザックが困ったように頭を搔いて言う。
レイは更にこう続ける。
「興味なかったし……
でも、このリビングに玄関がある…。」
『…じゃあ、その玄関に行ってみようか?』
「……そーだな。
まぁ、じゃあとりあえず、玄関に行ってみるか。」
「うん。」
私の言葉に、ザックとレイは同意してくれた。
『…レイ。』
「…なに?悠。」
私はそっと、その深緑色の表紙の聖書を拾い上げる。
そして、私をじっと見つめ返す静かな蒼い瞳を、
私もじっと見つめ返した……。
『………この聖書、
私が貰っても良いかな…?』
「……どうして、そんなことを訊くの…?」
『え…。』