The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第20章 The truth -真実-
「……好き勝手言いやがって……。」
ダニー先生の言葉にザックが呟き、
私も何か反論をしようとしたその時、
小さくか細い声がその場を制した。
「__待って。」
「……レイチェル?」
レイは、ソファーから立ち上がり、
私達を真っ直ぐに見つめる。
「……。」
『……レイ?』
「__私のしたことは、穢れている。
罪を犯した……。
それは、知っていたの。
____でも、ダメだった。
罪だと知っているだけで……
__どうしてそれが悪いことなのか、わからないの。」
震える声でレイはそっと言葉を紡ぐ。
不安そうなその声音は、
本当に今にも壊れてしまいそうな彼女の心が
手に取るようにわかってしまう。
「…ねぇ、ザック…悠……。
ダメ?
違うの?
ザックは私の神様で、
悠は私の恩人じゃないの…?」
レイは、うわ言のように私達に言う。
そして言葉をふっとそこで切ってから、
私達に拳銃を突きつけた。
「…でも、欲しいの。
ザック、悠。
__私の神様が。
私のモノが…!」
レイは歪んだ笑みを浮かべた。
『っ…!?』
-バンッ!!-
「__レイ!!」
咄嗟のことで動けずにいた私を抱え、
ザックは既の所で避けて、レイに向かって叫んだ。
その瞳は、暗く、悲しく……。
まるで深海に沈んでいるようで、
私は悲しくなった。
ザックも重症を負い、私が触れてしまった場所からは血が滲んでしまっている。
……どうしてなの、レイ……。
そんなことを考えていた私の鼓膜を
劈くようなダニー先生の声が響く。