The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第20章 The truth -真実-
『……ザックは、ザックだもの。
…ねぇ、レイ…そうでしょう?
レイだって、レイでしかないでしょう……?』
「……レイチェルは、
自分の"理想の家族"を求めて、親を殺した女の子だ。
…僕は、そんな女の子のカウンセラーだった。」
私の声は、レイには届かなかったらしい。
レイは青白い顔をしたまま、俯いている。
そんなレイをよそに、ダニー先生が1人でに語り出した。
「そして彼女を、僕が頼んで……
このフロアの住人にした。
……まぁ、神父様はあまり気が進まなかったようだけど…
僕は彼女なら大丈夫だと思った。
そして何より……
彼女の瞳を____
彼女の永遠の孤独を、
どうしても守ってあげたかったんだ……。」
興奮気味に、まくし立てるように言うダニー先生。
そこで言葉を切って、一息つく。
それから更に、こうも続けた。
「……でも、彼女の心は壊れてしまった。
知らない間に、この部屋に置かれた聖書の1冊で……ね。」
ダニー先生は、そう言って、部屋の中央に置かれた
1冊の本へと視線を移した。
……この、本は…____
この聖書は、確か……____
ノイズがかったような何かが……
晴れていく……。
『……シスター…………。』
私の頬を、一筋の涙が伝った……。
私は小さく呟いて、涙を拭いレイの方へと視線を戻す。
『……レイ、答えて欲しい。
…この聖書の持ち主である老女は……。
彼女は、今どこに?
…生きて、いるんでしょう……?』
私の縋るような視線と声に、
少し戸惑ったような様子を見せたレイは、
暗い顔で、ゆっくりと左右に振った……。