The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第19章 Ray -レイ-
私はそっと振り返って、
お母さんが何かを隠していた辺りを見る。
「…お母さん。
あそこに何を隠してたのかな……。
…言うことを聞かせる、切り札……?」
私は好奇心に駆られて、
そっと戸棚の方へ歩み寄った。
「………!!」
その黒い物体は、重くて、金属でできていて、とても冷たい。
…これは………。
「…拳銃。
…こんなもの、ここにあったんだ。
……切り札……____」
お母さんの、"切り札"という言葉が、
頭の中に、お料理を焦がしてフライパンに付いてしまった焼け焦げみたいに……
こびり付いて、離れない。
私はグッとそれを握りしめてから、
バレてしまわないように、そっと…
元の場所に戻した。
「……結局、誰も…
私の話なんて、聞いてはくれなかった……。」