The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第19章 Ray -レイ-
-バシンッ!-
「あはははははっ!
すごい!
なんであなたも、言う事を聞かないの!?」
「……。」
私は、お母さんに強くぶたれた。
……痛い。
どうして、私は叩かれてしまったの……?
お母さんは、狂ったように笑った。
尚も唾を撒き散らしながら、叫ぶ様に言う。
「ねぇ、私はね、
あなたがいるから、この地獄に足をとられているのよ?」
…私が、いけなかったの……?
「あなたの存在が憎いのよ…?」
……私がお母さんに、何をしてしまったと言うの……?
「あいつとの交わりを見ているようで、
気持ち悪くて仕方ないのよ……!?」
「…………。」
……私が生まれてきたのが、いけなかったの……?
「……2階の、自分の部屋に行きなさい。」
……お母さんの言葉に自分の中で考えを巡らせてみる。
どれだけ自問しても、答えなんて返ってこない。
「……。
……お母さん。
言うことを聞いたら、私の話…
聞いてくれる……?」
最後は少し落ち着いてきたのか、
静かに言ったお母さんの、今にも死んでしまいそうな青白い顔を見上げて、
私はそっと訊ねた。
……お願い。
お願いだから、私の話を、聞いて……。
私の願いも虚しく、
お母さんは再び声を荒らげた。
「早く、行きなさい!
これ以上……
私を不幸で、酷い母親にさせないで……!」
「……。」
-バタン…-
私は出ていってしまったお母さんの背中を見送って、
そっと呟く。
「…誰も、
誰かの言うことなんか聞かない。…聞いてない。
……なんでだろう。」