The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第19章 Ray -レイ-
お父さんは
荒く、大きく、肩で呼吸をしながらそう叫んで、
さっさと家を出ていってしまった。
「…………。
……お母さん。」
それを見送ってから、
動こうとしないお母さんに私は声をかけてみた。
「……いつ、か……
あぁ、いつか……
わたし……殺……やる……。」
私の声が聞こえていないような素振りのお母さんは、
ぶつぶつと1人で何かを呟いている。
お母さんは、暗い…
死にかけのような表情のまま、
リビングから廊下の方へと、出ていってしまった。
「……話を、聞いてもらわないと……。」
私はお母さんを追いかけた。
「…撃ち……やる……。
私に…何かあったら……、
反対にこれで……。
これで……あいつを……
撃ち殺してやる……____
ざまぁ、みなさい。
私の切り札は、ここに隠してやる……。
もし、そうなったら……
あいつは後悔して、泣き喚けばいいの…。」
「……お母さん。」
廊下にある小さな戸棚の近くで、
何やらゴソゴソと隠しながらブツブツと呟くお母さんの背後に、
私は近寄って声をかけた。
「っ…!?
…レイ……何してるの。」
「お母さん、あのね。
話を聞いて欲しいの……。」
驚いたようにバッと飛び退いて私を振り返ったお母さんが言う。
私がそう答えると、お母さんは突き放す言った。
「あのね……私は今、あなたにかまってる余裕はないの……。
ぐしゃぐしゃになったキッチンを片付けなきゃいけないし、
あなたの話を大人しく聞く余裕なんて、
心にないのよ……?」
「…それでも聞いてよ。
勝手なことをしたら、怒るでしょう?」
私が尋ねたその時……____