The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第19章 Ray -レイ-
「お前みたいな、
精神障害の嫁をもらった俺は、不幸だよ……。
それは、お前の存在が
不幸だからに違いないんだ。
なぁ、どうしてお前はこんなに不幸なんだろうなぁ…!?」
-ドンッ!-
-ドンッドンッ!!-
先程よりも、激しさを増す暴力…。
耳を塞ぎたくなるような暴言……。
「あぁぁあ!!
あなたが私をこうしたのよ!
あなたのせい、あなたのせい…っ!!」
-ガッシャーン!!-
「…………。」
何かがまた、割れるような大きな音がした。
「 ……今日は、キッチンにいるな。
話、聞いてもらえるかな……。」
部屋の入口辺りに立ったまま、
どこかネジの外れた、壊れかけの思考回路で
そんなことを考えて、そっと呟いた。
-ドンッ-
-ドンッドンッ!!-
私はキッチンのドアへと歩み寄った。
…ドアを開けようとしたその時……__
-ガチャ-
「……あ。」
キッチンから、お父さんが出てきた。
「…………。」
「お前……。
遅くまでどこを歩いていたんだ。」
「……。」
「相変わらず無言か……。
頭は動いているのか?」
「……あの……。」
「……あぁ。
お前も俺に文句があるのか?」
少しのやり取りのうち、
少しだけ間を置いてお父さんはそういう。
薄暗いこの家の中で、お父さんの表情は読み取れないが、
きっと顔を顰めているんだろう……。