The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第19章 Ray -レイ-
お父さんはそのまま
私の方へ、床に散らばったゴミを蹴散らしながら歩み寄ってくる。
-ガチャ…-
「…待ってちょうだい……。」
お母さんもキッチンから出てきた。
その声はいつもよりも少し弱く聞こえる。
お父さんはお母さんの方を振り返る。
「あなた。
お金を持ち出して、どこへ行こうって言うの…?
お酒?それとも女?
うふふ……。
また、私を不幸にするのね?」
「笑うな……耳障りだ。
俺は、俺の幸福を買いに行くんだ。」
「あら!?
なら私の幸福も買ってきてくれるのかしら!?
不幸な私にも、
幸福とやらを買ってきてちょうだいよ!」
お母さんは、向き直ったお父さんに
ヒステリックな金切り声でそう叫ぶ。
お父さんも再度怒鳴るように声を返した。
「不幸なだけでなく、
お前は金まで食うのか!?
精神病で家計のやりくりもできないのに……!」
「__そうやって、
全て私の所為にする。
私に押し付ける…っ!!
あぁぁぁあぁああぁ!!汚い男っ!!
汚れた手で、私の人生まで汚した!!
頭も、体も、性根も!
酒に侵されている!!」
-ドスッ!!-
再度ヒステリックに金切り声をあげたお母さんを、
お父さんは力いっぱい殴った。