The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第19章 Ray -レイ-
「…ここが、あいつの部屋か?」
先に中に入って行ったザックが、
室内をぐるりと見回しながら言う。
その部屋の入口付近には、
大きく飛び散ったような、赤黒い染みが……____
このフロアには、ちょくちょく
似たような赤黒い染みが見受けられた。
……レイは一体、
こんな薄暗く汚れたこの場所で
どんな生活を送っていたのだろうか……。
「……。
床が真っ赤……か。
普通だか、普通じゃねぇーんだか…
わっかんねぇな。」
そんなぽつりと零れたザックの呟きに、
私は室内へと視線を滑らせた。
…よくよく注意して
耳をすませてみると、
オルゴールのような音楽と共に、
静かに時計の秒針の進み音が聞こえる。
-チッ-
-チッ-
-チッ-
淡々と時を刻み、
ここの空間には、静かだが、
確かに時の流れや生活感が
僅かではあるが、あるように思われた。
…ただ、手のひらから零れ落ちるだけの
冷たい時間が……____
……レイ、
まさかこんなところで寝起きしていたの……?
そんな私の考えを他所に、
ザックは自由に部屋を見て回る。
……ただし、
ぶつぶつと独り言を呟きながら。
「……本か。
あいつ、全部これ読めんのかよ。
…マジかよ。」
私も部屋の中を、
何か手がかりがないものかと歩き回る。